菅義偉政権の発足から約1カ月半。安倍晋三前政権の「アベノミクス」の継承を掲げてきた菅氏だが、独自色も見えてきた。規制改革やデジタル化の推進などを打ち出す一方、政策決定プロセスで表面化してきたのは安倍政権と異なる「脱経産省内閣」だ。
「未来投資会議を廃止し、成長戦略会議を新設する」。西村康稔経済再生担当相は10月9日の記者会見で淡々と発表した。未来投資会議は安倍政権下で「アベノミクス」を遂行する上で重要な役割を果たした。同会議は経済産業省が主導し、議長は首相だった。しかし、後継組織の成長戦略会議の議長は官房長官になった。格下げは明らかだ。
焦点だった経済政策の司令塔
8月下旬の安倍前首相の突然の退任表明後、新政権で経済政策の司令塔が、財務省や内閣府の影響が強い経済財政諮問会議になるのか、従来通り未来投資会議になるのかは、一つの焦点だった。
前政権では、安倍氏の最側近で経産省出身の今井尚哉首相補佐官が経済政策や外交政策で強い影響力を発揮した。未来投資会議は、今井氏に近い経産省経済産業政策局長の新原浩朗氏が切り盛りし、成長戦略にとどまらず、社会保障改革や新型コロナ対策の議論など、他省庁に及ぶ政策も動かした。「経産省内閣」と称されたゆえんだ。
その一方で、経済財政運営の指針「骨太の方針」を策定する経済財政諮問会議の存在感は安倍政権では薄かった。
西村氏は同日の会見で「経済財政諮問会議が総司令塔。それぞれの改革テーマの具体化を成長戦略会議で行う」と説明。ここで菅政権での会議体の位置付けがはっきりした。
菅首相が内閣官房長官時代に秘書官を務めた矢野康治氏は財務省の主計局長、同じく林幸宏…
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